絶対に見なければいけない映画

人間の條件DVD-BOX
 時間が空くと、映画を見る。やっぱり映画館で。映画は映画館で見れば見るほど、また見たくなる。ほとんど中毒状態。一人暮らしを始めた頃から、いつも手元に本がないと不安な「活字中毒」になり、この数年は本数はたくさんは見られないけれど「映画中毒」も加わるはめに。
 もともと好きな音楽や芸術、スポーツに本など自分の興味のあるものにはすべてお金も時間もかけてきたつもり。夫と出会って、さらに旅行と映画が加わり、ますます世界が広がった。
 
小林正樹を知っているか?」
 
この映画との出会いはモントリオールでのこの一言から始まった。映画好きを自負する夫が、今までこの映画を知らなかったことを恥じるほど、ぶっ飛んだ。
以下は夫から聞いた話。

2年前、ケベック映画の歴史を調べるためにモントリオールを訪れたとき、ロック・デュメール氏(ケベックを代表する映画プロデューサー)と出会う。
映画について、2時間以上熱く語る彼の前に圧倒されながら、一言も漏らすまいと全身を耳にして取材メモを書き留めた夫。気がついて年齢を聞くと、彼はなんと当時70歳を超えていた!
最後の質問でインタビューを締めくくろうと…
「あなたのもっとも好きな映画を教えてください。」
「日本の『人間の条件』だよ。君は小林正樹を知っているか?僕の人生を変えた素晴らしい映画だよ」
小林正樹は知っていますが、残念ながら『人間の条件』は見ていません…」
あのときの思いは忘れていなかったが、数日前までこの映画には出会えなかった。

久しぶりにDVDをレンタルしようと店に行ったら、この映画のDVDがあることに気づく。
なんと6部構成で、全上映時間は10時間近く。
映画製作に3年、出演者2万人。

最初の1本目でぶっ飛んだ。
主人公の梶(仲代達矢、若いときの義父にそっくり!平井堅にも似てたりして…)の仕事は労務管理!おおっ、こんなテーマ見たことないぞ!
とにかく、すごい、びっくりの連続。1959年にこんなすごい映画があったなんて。。。

この映画は※モントリオール世界映画祭(1962年)で字幕もなく、ボランティアの日本語がわかる牧師の解説で上映された。オールナイト上映後、出来上がったばかりのフィルム缶を抱えてやってきた無名の小林監督を2500人の人々がスタンディングオベーションで称えた。


寝る時間を削ってでも、見るべき映画がある。
映画には、ときに人生を左右する出会いと力がある。
全編を見終わったとき、私にとっての「ヴェニスに死す」を超える映画になるかもしれない。


●1960年ヴェネチア国際映画祭 サン・ジョルジョ賞受賞


毎日映画コンクール
http://www.japan-movie.net/history/?cid=43


モントリオール世界映画祭(1962年)
30回を迎えた現在のモントリオール世界映画祭の前に1960年から1967年まで開催されていた映画祭。
モントリオール世界映画祭公式HPにもアーカイブは残されていない。
1962年、「人間の条件」を絶賛された小林正樹監督は次の1963年にも招待されてモントリオール世界映画祭に参加している。