イヴ・サンローラン

 あまりのたくさんの満開の桜を見ているとくらくらすることがある。桜の木下には死体が埋まっている、って信じてしまう。
 それぐらいあまりある才能は狂気と紙一重。彼はこの仕事をしていなかったら、内気で神経質なただのゲイの青年だっただろう。
 映画のなかで出てくるほんとうに美しい衣装はピエール・ベルジュ-イヴ・サンローラン財団所有の貴重な作品。見ごたえあり。
 サンローランを演じている俳優は繊細で神経質で偏屈な主人公を見事に体現していた。で、「どっかでみたなぁ…」と思っていたら、大好きなオゾン監督の「婚約者の友人」に出ていたピエール・ニネだった。「婚約者の友人」の彼も屈折した役柄だったけど、オゾン監督が起用する俳優らしくめっちゃキレイ!(オゾン好み!うふっ)サンローラン役ではトレードマークのメガネをかけているので、彼の美しさが隠されているが、頭の先から爪の先まで美しい〜。「婚約者の友人」で裸で泳ぐシーンがあるのだが、池からあがってきた彼の上半身のキラキラ具合ときたら!(よだれが…)
 ちと横道に逸れてしまったけど、男の嫉妬や見栄とか美しくないものが混ざっていてこそ、こういう良い映画になる。
 そういえば、「ベニスに死す」に出ていた少年の透明感がそのまま成長したらピエール・ニネみたくなるのかなぁ、と思った。